18. パンドラの箱
別れてから何も考えられず、昨日まで過ごしてきた4年もの長い時間に触れることもできず、いろいろな物を一つの箱に投げ込んで封印した。
同時に、言われた言葉を必死の思いで力を振り絞って箇条書きにし自分への戒めにした。
そのまま4年半。
長い時間をかけて乗り越えた。
後悔していない。あのとき考え抜いた結論は間違いでなかったと今も思う。
別れてからの4年半、私たちは全く違う時間の使い方をしていたことを、再会して知った。
その間に彼は、再婚して離婚して、また再婚した新婚だった。
それは衝撃だった。
新しい道に進んでいたことに驚いたのではなく、それが2回も繰り返されていたことに驚いた。
切り換えが早いことは、人生を楽しむことができる人。
もっと衝撃だったのは、
今の自分の私生活、仕事のことを何も躊躇なく話すこの人。
私に言ったことを何も覚えていないような様子。
私にしたことを何も覚えていない様子。
彼のその人間性が、感覚が、私にはとてつもなく苦痛だった。心が悲鳴をあげた。
頭と心と体がバラバラになった。
コントロールなんてできるわけがない。
そして、再会した今私に向って
「また会おう。また今度」
「あちこち行きたい。次はゆっくりしよう」
「どこに行きたい?行きたいところ言って」
わざわざ指輪を外して来る。私の前で平気な顔をしていられる。
黙って自宅に帰って過ごす。そんなことができる男性だった。気持ち悪い。
投げ込んだままの箱を今回初めて開けてみた。
いろいろな物が大量に入っていた。
当時決められた家庭内のたくさんのルール。
あまりにも細か過ぎて、独自ルール過ぎて覚えきれず、その場で書いたもの。
暴言、理不尽な言葉の数々。無言の圧力、抑え込む行動。冷ややかな目。
一緒にいた頃のこと、あの最後のGWにあったいろいろ。
こんなことをする人に罪はないのですか。
受けた側が我慢するしかないのですか。
記憶がよみがえってきた。
苦しい。辛い。息ができない。
長い間苦しんでしまったけれど、私も生きることが上手な人間でありたかった。