11. 終わりの予兆
今思えば、彼はこの4月、異様に優しかった。積極的、前向き、物事を進めようとしていた。
お正月のこともあって小さな大きな違和感不安があったけど、彼が穏やかに戻ったのは「努力してくれている」のだと思ってしまった。
GWが始まりどう過ごすか計画していたとき、「オクトーバーフェストには、〇日に行きたい」「いいよ。そうしよう」と決まった。
予定日の前日の朝「今日雨で空いているだろうから今日の夜行こう」と突然の予定変更の提案あり。
「今日は他の、先に計画していたしなくちゃいけない予定通りがいい」日用品を揃えに購入に行く予定だった。
「きっと今日空いている。行こう」
「計画通り〇日のが良い」
言葉を変え、言い方を変え、今日する予定を優先したいことを説明しても、何回もこの会話の繰り返し。
ほとほと疲れ果て、受け入れた。
夕方から冷たい雨。
「寒いね。帰ろうか」と言った私に、
「せっかく来たのに機嫌が悪くて、気分が悪い。嫌なら来なければ良かったじゃん。来ないって言えば良かったじゃん」
なんでこんなイベントに来てまで、楽しい場で感情ぶつけるのだろう。
朝言われた時点で「今日は嫌。予定通りの〇日がいい」と言った。
それを受け入れなかったのはあなた。自分の主張をし続けた。
それでも、あなたの意見を受け入れて「行った」私が悪いの?
私が折れずに行かなければ、私が「うん」と言うまで言い続けるだけ。「私が行きたくないと言った」となるだけ。
だから変更を受け入れた。
何回目だろう。もう数えきれないし、こんなやり取りに疲れた。
「やり直したい。自分が悪かった。同じことはもうしない」と言った人が、同じことを繰り返す。
「変わって」と私が無理やり約束させたのではない。
あなたが自分でした約束。私といるためにあなたが自分で望んだこと。
できない約束はしないでよ。
この人は変わることはない。
少しも自分が悪いとは思っていないし、二人にとって一番良い着地点を探すこともなく、自分の希望を押し通しただ相手を責める。
家を出てくる数日前の出来事。
この日から一瞬も気が抜けなくなった。彼のスイッチが入った。