13. 再会
元気よく現れて、4年半振りに会った第一声は、相変わらずかわいいね。
会えて嬉しい。
あの頃より余裕ができた。
仕事のきっかけを作ってくれたのは私。
仕事は順調。
事務所を外に持った。事務的なバイトが毎日来るようになった。撮影スタッフも依頼できる人が増えた。
収支まで見せるから、部外者に見せていいの?と聞けば、私は特別だから。
男とか女とかではなく連絡を取りたい。
私とは結婚するつもりだったよ。
来年度から〇〇会青年部の委員長に決まった。仙台と大分への泊まりイベントがある。
ウエディングムービーだけではこの先ずっとはやっていけなさそう。次の新しいことを考えていかないと。
私の目の前で、自分が話したいことを楽しそうに話し続けているのを見ながら、ずっと心の中で思って聞いていた。
話してほしいこと、話したい話題、私が今あなたに望むことはただ一つ。
「自分がしたこと自覚してよ。謝ってよ。今していること言っていることおかしいこと自覚しなよ」
私が一緒にいたあの頃のあの人は、いろいろな重荷を抱えていた。
仕事がうまくいけば、お金の心配がなければ、心配事が減れば、人は気持ちが楽になる。
誰にでも言えること。
再会後、正直な感想をラインした。
彼がした私への罪、私が受けた辛さ苦しみの気持ちを省いて、4年半振りに会った目の前にいる男性から感じた印象を素直に伝えた。
受けた恐怖の記憶を抑え、二度と会うことはない彼の未来へのエールを込めて精一杯優しい言葉を送った。
当たり前だけど、呑気な返事が返ってきた。
この人やっぱり、自分のしたこと何も覚えていない。言ったこと覚えていない。
人生を壊した、してはいけないことをした自覚も反省も後悔も、ないようにみえた。
私の精神が崩れる最初の出来事になった再会。
人間の精神って、徐々に徐々に壊れていくものだと思っていたけれど、
「これが原因」「この瞬間」がしっかりあった。